裏紙

毎日は死ぬほど続く

「HI,lake」セルフライナーノーツ

naka0akan.bandcamp.com

 

【はじめに】

当該記事は2017/11/23に私がリリースした音源作品「Hi,lake」のセルフライナーノーツです。

各楽曲の解説や制作時のもろもろを記載します。

 

 

音源の在り処

下記Bandcampの私のサイトからどうぞ。

投げ銭(入手する人が値段を決める)形式なので、無料でもダウンロード可能です!

 

曲目

  1. Hi,lake(inst)
  2. florid
  3. 紫陽花
  4. アナザーワールドがはじまる
  5. 星になるまで
  6. アルミ缶
  7. time vacation

7曲入り(1曲インスト)となっています。

 

 

アートワーク

一枚の写真を元に作っています。元々は何の変哲も無い池の写真なのですが、レタッチを重ねた結果元の写りがどんな感じだったかがよくわからないくらいになっています。陽の光が小さな波に反射して煌めいている様が綺麗です。
f:id:naka0akan:20180330010918j:image

タイトルは隙間感のある中央左側に配置しました。あまり捻らずにストレートにタイトルを伝えるよう意識した結果こうなりました。

 

 

使用機材

制作に使用した機材等をまとめます。基本的にあまりお金はかけてい(られる余裕が)ないです!

 

PC

  • Mac Book Pro early 2011

初めてのマイパソコンです。未だバリバリ現役。

 

DAW

これがGarageBandを使った最初で最後の作品でした…。

 

周辺機器

オーディオインターフェース
  • TC Electronics:Desktop Konnekt 6
  • PreSonus:AudioBox iTwo
ヘッドホン
  • Presonus:HD7
  • JVC:HP-RX900
マイク

 

楽器

ギター
  • FgN:NCST-20R/AL

ストラトタイプのギターです。PUはSSHでハムはプルタップ可能の構成。

「星になるまで」「アルミ缶」「time vacation」で使用。

  • Bacchus:T-MASTER

テレキャスタータイプのギターです。ほぼ全ての曲で使用しています。

  • Bacchus:BJM-680G/R

ジャズマスタータイプのギターです。「アルミ缶」で使用。

エフェクター
  • VOX:Tonelab EX
  • BOSS:GT-1
MIDIキーボード

 

各トラックについて

トラックごとに、最後に全体を通しての解説や反省点等々をまとめます。

タイトルの後ろについている「[nn:nn]」はトラックの分数・秒数を表示しています。

 

1.Hi,lake(inst) [00:49]

「ハイ、レイク」と読みます。アルバムの中で最後に出来た曲です。

この曲は、収録されている他の各楽曲と通ずる何かを各フレーズや音作りで匂わせつつ、それでいて主張し過ぎない曲に仕上げるという目標を掲げた上で作りました。

曲のアウトロを次の曲である「florid」のイントロに繋げていますが、これはあくまでアルバムを曲順通りに聴く際の導入としての役割を果たす為です。アウトロを少し変えるだけで、他の曲とも違和感無く繋げられると思います。

"A"のコードがこの曲の基盤になっています。アルファベットの最初の文字ですね。これも願掛けのようなものでしたが、結果今回のアルバムのプロローグとして適切な存在になってくれたと思います。

タイトルは直訳すると「やあ、湖」「こんにちは、湖」といった感じになりますが、こうなった理由は主に以下の2つです。

  • 初めて盤として制作する作品だったので、何かとの出会いを感じるような単語を使いたかった。
  • 全体的に浮遊感がある音や拡がりを感じる曲が多かったので、開けた場所のイメージとして「lake」という単語を使いたかった。

"開けた場所のイメージ"ってのがもうなんとも抽象的かつ掴み所のない感じですが…聴いてくださる方々にもうまく伝わるといいなぁと静かに願っています。

 

 

 

2.florid [04:13]

2017年の春頃に制作を始めた曲です。元々一部分は録音まで済んでいたのですが、今回このアルバムに収録するにあたって、ギターとボーカルを全て再録しました。そのギターの録音の際、初めてBOSSのGT-1(ギターのマルチエフェクター)使いました。逆にこの曲以外のギターはすべてVOXのTonelab EXを使って音を作っています。

ギターの付点8分ディレイを用いたフレーズが粒立ち良く明瞭に録れたのがよかったです。曲の賑やかな幕開けや爽快感を綺麗に表現してくれていると思います。

歌の話で…普段の喋り方が問題なのかもしれませんが、早い口がツラいです…。捲し立てるように歌詞がギッシリ詰まったメロディーを歌う時はとても苦労しました。

高み増してきた雲、雪解け水も掃けて

とか

君の桜色の頬が 僕の未来を彩った

のところが特にやばいっす…。仮に今後ライブとか出来たとしてもちゃんと歌えるかなコレ。

「春っぽさ」や「はじまり」をイメージした曲調・歌詞になっています。春特有の心の騒めきと穏やかさが混在していてごちゃっとした部分も垣間見える曲ですが、決して冗長ではないと思います。

歌詞もあたたかな感じで収められたと思うので、ふと想い付く誰かを当てはめつつ聴いていただくのも良いかもしれませんね。

 

 

3.紫陽花 [04:08]

浮遊感のあるギターのハーモニクス音から始まるミディアムテンポの曲。タイトルにある通り「紫陽花」の花をイメージした曲になっています。

ゆったりとしたテンポがしとしとと降る雨を浴びて揺れる紫陽花の様で淑やかな雰囲気ですね。ギターの残響音が空間を押し拡げるように響いていて良い感じです。歌のコーラスはメインの旋律を含めて3声になっていて厚みがありゴージャスです。

と、初っ端から色々書きましたが、この曲は自分の中でかなりお気に入りな曲です。

歌詞も割かし気に入っているフレーズが多くて、例えば

思い出に殺されたなら
雨に溶けて消えようか

という部分は、パッと見ちょっと物騒な歌詞ですが、その後の

思い込みに急かされ、早足で駆ける

のおかげでだいぶ柔らかな印象になります。

 

この歌詞には具体的なストーリーがあるわけではないですし、自分で言うのもですが、不確かな点が多いです。ただひとつ確実な事は、実体験もフィクションも本当の気持ちも妄想もすべて混合しているという事です。

具体的でない故に、聴き手(および自分自身)が受け取った時に色々な読み方・感じ方で捉えられると思うので、これはこれで悪くないかなぁと思っています。

 

 

4.アナザーワールドがはじまる [04:48]

2017年3月に出来た曲です。曲の全体像や歌詞は2日くらいで完成していました。

当時は曲作りのブランク期間のようなものに陥っていて(不調だったとかではなくただ単純に曲作りをしていなかった)久しぶりの作曲だったのですが、その割に自分で満足出来る曲を完成させられたので、ホッとした記憶があります。そしてこの曲が出来て以降、積極的に曲作りをするようになりました。

というのもありなんとなく思い入れが強い曲で、このアルバム「Hi,lake」においてもターニングポイント的な役割を果たしてくれていると思います。

テーマとしては「別れ」になるでしょうか。学校を卒業するような華々しさは無く、"もう二度と会えない"といった絶望感も無く、けれど"もう二度と会わないだろうな"といったようなどこか諦観めいた何か、そんな感覚に近いかもしれません。

大罪を伴う甘美な響き
残るのはあの時の
景色、声だけ

全体的に少し後ろ向きというか内省的というか。もう声が届かない誰かに対して独りさみしく語りかけているかのような、そんな歌詞・歌い方になっています。

オルガンの音色を模したエレキピアノの音を使用していて、イントロやサビなどでフレーズを入れ込んでいるのですが、そのフレーズが高域部分になると突然オケから抜け出してくる感じが自分の中でとてもしっくりきています。

淡々と静かに響くドラ厶のキックの音もこの曲の侘しさを助長していますね。こういう、音と音の隙間とか静けさみたいな物を大事に扱う曲を今後も作っていきたいところです。

 

 

5.星になるまで [03:57]

実は2015年の初夏頃に出来ていた曲でした。

曲調からしてあんま暗く聴こえないかもしれませんが、自分にとってはこの曲がアルバムの中で一番ヘビーな曲です。その理由を端的に言うと、部分的に人を悼む気持ちで作られているからです。

自分は自分の作品が完成してからそれを聴く事が結構あるのですが(確認も兼ねて、ですが)この曲だけは全然聴けていません。

イントロ含め途中まではどこか閉塞感・圧迫感があるコード進行ですが、少しリズミカルなワルツを挟んで「夜空の下で〜」からは転調して開放感のあるメジャーコードがメインになっています。

ステレオで右側にリードギターの音を配置しているのですが、その音がかなり理想通りに録れたのが嬉しかった記憶があります。

「光に還れば皆、同じだ」と
笑った人もいたそうな
そう 笑えない人もいるというのに

命が終わるという事は実際のところどういう事なのでしょう?正解はありませんし、生きている人の数だけ考え方があると思います。きっと命が続く限り良くも悪くも色々ありますが、我々には命が終わるまで生きるという形でしか、終わりへ向かう事が出来ません。

疑念や感傷は絶えませんが、ここでは

「誰かが気付くだろう」
そんな風に在ろう

と刻む事により、一時的に事無きを得ています。

 

 

6.アルミ缶 [04:36]

このアルバムの曲の中で唯一、ジャズマスター(ギター)を使用しています!

ジャズマスターのリアピックアップで出したペカペカした音がバッキングギターとしてイヤホンで言うと左側で延々鳴っています。そして右側ではディレイとリバーブをガンガンにかけたフワフワかつキラキラしたギターの音が鳴っています。左右でキャラクターが別れていると聴いていて楽しいですよね?…楽しいはずです!

歌メロのキーが高くて自分が地声で出せる声域ギリギリくらいを行ったり来たりしています。そのせいもあって所々シャウト気味になっている箇所もありますが、荒削りな感じが出せていて良いかなと思っています。

歌詞については、自分の作る曲の中では珍しくストーリー仕立てというか、物語性のある物になったなあと思います。実体験が比較的色濃く出ているからでしょうか。

視界が回って止まらない
高揚感、高揚感!

というちょっと印象的なフレーズがあったり、あとはあまり自分では意識していなかったのですが、

上っ面の青い春
顔だけが赤く染まっていった

といった色を使った歌い回しとかが地味に決まっていて、結構良い歌詞が作れたのかなぁと思っています。

 

※アルミ缶は蹴り飛ばさずにちゃんとゴミ箱に捨てましょう。危なくなければ蹴ってもいいけど、ゴミ箱に。

 

 

7.time vacation [04:14]

アルバムの最後の曲。初めに「time vacation」という言葉とメロディーがふと頭の中に浮かんで、それを拡張していったものです。

最後だからどうこうというのは作っている時はあまり意識していなくて…後腐れの無いというか、晴れ晴れとした感じというか、あまりそういう気持ちを押し出しているような曲ではありません。特別騒がしいわけでもなく特徴的なフレーズを盛り込むわけでもなく、力を抜いてリラックスして作った結果、自然と「大団円」っぽさを感じさせる伸び伸びとした曲になりました。

また気が向いたら
また時を止めて
会いに行くよ

いつでも気軽に会える・聴ける音楽っていいなぁ、と思っています。言葉も音もそうですが大きなパワーを感じるフレーズや音があると、意識がついついそれらに囚われてしまうような気がして。サビのメロディが良いとかギターソロが良いとか、そういうの思ってもらえるのはもちろん鼻血が出るほど嬉しいんですが、曲全体やアルバム全体といった単位で「なんかいいなぁ」と思ってもらえるのが最終的に自分が音楽作る上で目指す所だと思うんです。具体的な感情はなくても全然良いんです。不特定多数の方々に聴いて頂けるのであれば。

生活の中心ではなくて、さりげない存在でありたいのです。例えば映画館のスクリーンは上映する前からずっとそこにあって、上映が終わった後もそのまま置いてある、みたいな。その上に映像が写し出されるというだけで、スクリーン自体が何かを自主的に映し出すわけではありません。いつか何かを投影されるまでそこで待ち続ける・在り続けるといった、地続きなテンションを保ったままの存在と言えると思うんです。

たぶんこれは自分のパーソナリティーに関わるものなのかもしれませんが、このアルバムもそれが著れている曲で終わる事が出来ると良いなぁと。そんな想いからこの曲をアルバムの最後に置く事になりました。

途中でいわゆる"語り"が入っています。歌詞として収まらない言葉の方が自分の素のままの言葉というか、それが本音ではなくとも、普段から自分が自然体で読み書きしている言葉に近い気がしています。

 

 

 

 

全体

1作目ということもあり、色々とどうしたものかと悩む点がとても多かったです。例えば、

  • 制作環境
  • 楽曲の音質
  • 演奏するときの再現性
  • 自分のやりたいことがなんなのか
  • どのくらいのテンションで宣伝をするか

などなど。

全体的に自分の中で答えが出なくて、最終的に音質以外の要素についてあまり強い縛りや拘りを持たないままやや駆け足気味にリリースに至ってしまいました。

誰に求められているでもないですし、遅れたからといって誰に迷惑をかけるわけでもないですが、自分の中で目標にしていた時期にリリース出来るところまでちゃんと持っていけるとやっぱりどこかほっとします。 

締め切りや契約に追われるアーティスト達の活動って、実はものすごい事だなあ…と素直に思います。曲を作る能力も、そのディレクションも、ライブでの演奏も、歌詞の語彙も。

 

制作における反省点として、自分は明らかに勉強不足・努力不足な事がわかりました。モニタリングやミックスダウンの進め方と言った点、あとは単純に楽器の演奏や歌唱です。

作りたい音を作る・鳴らしたい音を鳴らす、といった単純な作業には苦手意識ありませんが、それらをとりまとめる能力が乏しいようです。ミックスは迷走しまくったのでだいぶ時間がかかってしまいました…。

それらを解決するために、既に世に流通している"素晴らしい音楽作品"の制作を追体験するべきだと考えています。その作品が収録されている楽曲がどのように・どこで・何を使って・誰の手によって・どんな影響を受けて作られたか、などという具体的な要因やバックグラウンドを追究していけば、自ずと「こうしたい時はどうすればよい」というビジョンが浮かびやすくなる気がしています。

というより、いくらでも教材がある現代においてそれらを聴き惜しみしているのは単純にもったいない事ですよね…。

 

 

今後について 

制作環境について、使用する楽器は今後あまり大きく変わる事は無いかなぁと思います。たまには自分の持っていない楽器の生音や、環境音を録音してサンプラーに取り込んで、といった事もやっていきたいと考えています。ただ、モニタリング環境は整えていきたいです。音楽の再生環境は人それぞれなので、なるべくどれにおいても自分の出す音の意図や、楽曲の持つ雰囲気が壊れてしまわないようにしたい。

あとは単純に、楽器や歌を練習する・DAWの使い方をマスターすることで諸々の作業の効率化を図って、制作のスピードをガンガン上げていきたいですね。今もいろんな曲のイメージが頭の中でポップコーンのようにポンポン弾けているのですが、それを録音したり音を掻き集めてミックスしたりという工程をもっとスムーズにこなせるようになりたいです。

 

 

おわりに 

「Hi,lake」の音源を聴いて下さった方、ライナーノーツ読んで下さった方、ありがとうございました!

引き続き音楽制作は続けていきますし、次の作品である「smog on the quarter」も3月にBandcampにリリース済みです。

この作品は「Hi,lake」とは全然違う雰囲気を持っていますので、こちらもこちらでどうぞよろしくお願いします。

 

 

ではまた。